幼なじみ
「春姉、引かないの?」
「当たり前でしょ?優衣は優衣のまんま」
「春姉...」
あたしは泣いた。
人前で泣くのは久しぶりだった。
誰かにだきしめてもらうのは久しぶりだった。
あたし...誰かにこうしてほしかったんだよね?
誰かに話を聞いてもらいたかったんだ。
千夏に言えばよかったのかな?
千夏は重い現実を受け止めてくれたかな?
「春姉?ありがとう。」
「いいのよ?あたしは...誰にも話せなかったから」
「へ?」
どういうこと?
「あたしもされたんだよ。高3の夏」
春姉が...?
あたしそんなの知らなかったし。
そんな気配もなかったよ?
「怖くてだれにも言えなかったんだ。だから優衣の力になりたかった。」
「春姉、あたしすごく救われた。ありがとう。」
「優衣...ありがとね」
春姉は優しくて...美人であたま良くて。
あたしの憧れだった。
でも、春姉にだっていろいろあるんだ。
春姉も、このつらい現実を乗り越えたんだ。
春姉、ありがとう。
春姉、はあったかいね。
あたしの周りにあったかい人がいてよかったよ。