好きすぎた、たぶん。


「デビューしてから、“MOON”を出せるまでずっと会社の言う通りに歌ってきたんだ。確かに俺が書いて作った曲なんだけど、会社が言うようにアレンジして、売れる曲にしてきた。」


「・・・そうなんですか・・・」


「俺らはまだデビューして1年ちょっとのヒヨっこだから、歌ってるだけじゃファンもつかないからさ、ファッション誌とか音楽とは関係ない仕事もしてきた。」


「・・・はい・・・」


「俺は、どうもそれが納得出来なくてさ。俺達の見てくれを見て好きになってくれた人がいても、俺はその人達が本当に俺らを好きなんだとは思えなかった。俺はモデルでも何でもない。歌が仕事で、その歌を聴いてほしかった。」


「・・・・・・」


「でも歌ってるのは会社の言う曲でさ。だから、どんなファンの人も受け入れられなかった。俺らの見てくれを見て好きになった人も、俺らの曲を聴いて好きになってくれた人も、本当の俺らを見てくれてるんじゃない。今思うと天狗だったのかもしれねぇな。」


「・・・そんなこと・・・」


「ずっと、自分達の歌が歌いたいって思ってた。俺の本当の声を聴いてほしかった。」





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