好きすぎた、たぶん。


「こういう時だけ優しくするから。」


「・・・別にそうじゃねぇよ。」



・・・確かにな。



確かにいつもと違うな。



投げやりっつーか、ちょっと痩せたな。



「そんなにやばいの?」


「・・・上手くいってるNUTSのボーカルさんにはわかんないよ。」


「そりゃお前の気持ちわかるよとかとは言わないよ。そんなこと言われてもウザイだろ。」


「・・・そうだね。」


「だから別に俺はお前に“何やってんだよ”とかって説教するつもりもないし、“大丈夫だよ”とかって根拠もなく励まそうとは思わない。」


「・・・可威らしいね。」


「でも、俺と付き合ってた頃の咲は違った。」


「・・・・・・」


「もっと生き生きしてたっつーか、歌うことが好きなんだなって、本当に思ってた。」


「・・・・・・」


「俺はさ、お前にとっていい彼氏だったとは思えないけど、でも、お前のこと尊敬してた。」


「・・・・・・」


「俺なんて出てきたばっかのペーペーで、お前は歌姫って騒がれてて、俺はお前の歌、好きだよ。」


「・・・・・・」


「こういうのが才能って言うんだろうなって、思ってた。」




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