好きすぎた、たぶん。
「あたしとキスもセックスもしないって言ったの、その理由だけ?」
「え?」
「その人の為じゃない?」
「・・・お前な。」
「ハハ。じゃあね。」
「・・・あぁ。」
いつもはそんなことしないけど、玄関まで見送った。
同じ事務所だし、会うことがなくなるわけじゃないけど、こういう関係で会うのは最後だから。
「タクシーで来たの?」
「うん。」
「そう。」
「可威。」
「ん?」
「あたしも。あたしも可威の歌好きだよ。」
「・・・ありがとう。」
「はい。」
「ん?」
靴を履いた咲が手を差し出してきた。