好きすぎた、たぶん。


「握手。」


「あぁ。」


「今までありがとうと、これからよろしくね。」


「うん。」



咲の手を握った。



「可威。」



名前を呼ばれて咲の顔を見た瞬間、チュッとキスをされた。



「最後の思い出。」



そう言って咲は笑って、玄関を出て行った。



ここまで咲に俺が言ったのは、俺がフって自暴自棄になられたんだったら嫌だなと思ったのもある。



だけど、何よりあいつの音楽が好きっていうのは、俺は一応わかってるつもりだったから。



咲にも、音楽が好きっていう純粋な気持ち、思い出してほしいと思った。



リビングに戻って煙草に火を点けた。



口元に手を持ってった時、さっきの咲の笑顔を思い出した。



咲と付き合い始めた日、事務所の帰りが一緒で俺は自分の車だったから、送ってってって言われて。



何気なく送ってったら、その時告られた。



俺は別に付き合ってる女もいなかったし、まぁいいかと思ってOKした。



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