好きすぎた、たぶん。
「兄の俺がこんなこと言うなんて、過保護ですよね。」
「・・・・・・いえ・・・」
「でも、今あの家に住んでるのは俺と詩織と母親だけなんです。父親は単身赴任をしてるので。」
「・・・そうなんですか・・・」
「詩織が小さい頃からそうなので、俺はずっと父親代わりをしてきました。年齢も離れてるので。」
「・・・はい・・・」
「最初はKAIさんといて詩織が幸せなら黙ってようと思ったんです。でも、やっぱり詩織が傷付くようなら黙ってはいられないです。過保護かもしれませんけど。」
「・・・・・・」
車の運転席と助手席に座ってるから、向かい合って目を見て話す・・・って感じじゃなかったけど、お兄さんが真剣に真面目に話してるのは痛いほどに伝わってきた。
そしてその真剣さに、俺は何も返せなかった。
「もし詩織が遊びなら本命にしてやってくださいとは言いません。彼女にしてやってくれなんてずうずうしいことも思ってません。だから、せめてもう、会わないでやってほしいんです。」
「・・・・・・・・・」
「あの週刊誌が出た日、朝のワイドショーでどこもKAIさんの話題をやってました。あれを学校行く前に見た時の詩織の顔は、忘れられません。」
「・・・・・・・・・」
「悲しそうな、泣き出しそうな、何とも言えない顔をしてたんです。」
「・・・・・・・・・」
「・・・すいません、勝手なことばかり言って。」
「・・・・・・・・・」
「きっと、詩織には恨まれるでしょうね。僕。」
「・・・・・・・・・」
「すいませんでした、お時間とらせて。・・・・・・失礼します。」
お兄さんは俺が何か言う前に、車を降りて帰って行ってしまった。