好きすぎた、たぶん。
もちろん今回もそれはある。
自分の気持ちで勝手に作って全然ダメだったら、これほど迷惑なことはない。
でも、それと同時に届くかっていう緊張もあった。
詩織ちゃんはこれを聴いてくれるかな。
聴いて詩織ちゃんへのことってわかってくれるかな。
これを聴いてどう思うかな。
別にこれを聴いて何かを期待してるわけじゃない。
詩織ちゃんが何かしてくれると思ってるわけでもない。
今と変わらずなのはわかってる。
でも、変わらなくていい。
変わらなくてもいいから、ただ届いてほしい。
聴いてほしい。
「可威。」
スタジオに着いたところで、撮影までの間俺だけ夏実に呼ばれた。
「ん?」
「ちょっと話。」
「・・・おぉ。」
鞄だけ楽屋に置いて、さっきまで乗ってた移動車に逆戻りした。