好きすぎた、たぶん。


「…詩織ちゃんも…してくれてるんだ。」


「……ずっと…してます…」


「……」


「ごめんなさい、会わないって言われたのに…終わったってわかってたのに…でも…」



目に涙をいっぱい溜めてそう言った詩織ちゃんを、俺は思わず抱きしめた。


「詩織ちゃん…」


「ごめん…なさい…」


「ごめん、また俺の話…聞いてくれる?」


「………」


「ちゃんと本当のこと話すから、ちゃんと本当の俺話すから、聞いてほしい。」


「……はい…」



ずっと、怖かった。



世間のイメージと俺が違いすぎて。



ずっと夢みてた今が、思い描いてたものと違って。



歌とギターで俺は生きてきた。



だから歌とギターで生きて行きたかった。



だけど、やっぱりそんなに世の中甘くなくて、歌ってればそれでいいってほど、俺には力がなかった。



音楽とは関係ない仕事だってしなきゃ知名度も上がらないし、ファンだってつかない。



そうわかってても、どうしてもその歌以外の仕事が受け入れられなかった。




< 855 / 880 >

この作品をシェア

pagetop