天使のキス
「……うん。」


ドクン……と、今まで脈打っていた心臓がいきなり止まった感覚がした。
嫌な予感は、予感では無く、確信に変わった。圭子が心配そうに、俺を見る。


「マジかよ、幸田のドコがいいんだよ?」


興味深々を装って、結衣に問い掛ける。


本当は聞きたくないのに。


気持ちと態度が違う自分が、凄くじれったい。
その時食べたカップケーキは、甘いはずなのに、何故か苦さを感じた。





「勇!」


放課後、俺を呼んだのは、圭子だった。
多分、あの事なんだろう。


「なんだよ…別に気にしてねえって」


「だって…ごめん。私がお昼誘ったせいで…」


圭子が涙目になり、申し訳なさそうな素振りをする。


「いいって。気にすんな。」


俺はそれだけ言って、その場を離れた。
別に、圭子が悪いんじゃない。


結衣も、幸田も悪くない。
悪いのは…結衣をしつこく思ってる、俺なのかもしれない。
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