天使のキス
クリスマス
しばらくして、クリスマスパーティの日が来た。
めったに着ないスーツに身を包み、家を出た。


必要の無い筈の、マサキにもらった箱を、コートのポケットに忍ばせていた。


「お!勇―。やっぱ来たんだ!」


マサキが笑って近寄ってくる。
スーツを着たって対して印象の変わらないマサキに、少し笑った。


「ま、頑張れよ!応援してるからな!」


マサキは、手にあの箱を持っていた。
今から意中の子でも口説きに行くのだろうか?


そういえば、銅像って、どこにあるんだろう?
と、思い会場を抜け出す。


庭に出て、しばらく歩くと、それらしい銅像が目に入った。


「これか…」


あまりの綺麗さに、しばし見とれる。
なんだか、この天使…結衣に似てないか?と少し笑う。


「…勇?」


後ろから声がして、振り向くと、そこには結衣の姿があった。
今、結衣の事を考えていたので、少し恥ずかしい。


「どうしたんだよ?幸田の奴は?」


俺は少し咳払いをして、聞いた。
結衣は少し俯いて、口を開いた。


「女の子と話してたから、ここだと思って…ほら、ジンクスの。」


結衣も知ってたのか…ジンクスの話。
俺は頭をポリポリとかいて、そこのベンチに腰かけた。結衣も隣に、座った。


「先生、やっぱモテるみたい…。なんだか、へこんじゃって。」


ため息をつく結衣は、瞳が少し潤んでいた。
きっと、泣きそうな気分なのだろうか。


「…これ、やるよ。」


俺が差し出したのは、マサキから貰った、ジンクスのネックレス。
結衣は少しきょとんとした顔をして、こちらを見ていた。


「この銅像の前で、この中に入ってるネックレスをプレゼントして、キスすると幸せになれるんだと。…俺は必要ねーから、お前、使えよ。」


俺は結衣の顔を見ずに、それを結衣の膝に投げる。


「お前を泣かす奴は、俺が許さないから」


そう言うと、結衣が笑った。


「な…なんで笑うんだよ!」


俺が真っ赤になって怒鳴ると、結衣は笑うのを止めて、言った。
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