記憶のない海
確かに過去
『自分』という人間が存在した。

『僕』以外に…というよりは、あれから前世の記憶が戻る事はなかった。

神様のちょっとしたプレゼントだったのかもしれない。

それからのあたしは
見るもの全てに懐かしさを覚えた。


──空の色

──新芽を出した葉の鮮やかな緑という色

──紅葉して、真紅の色を放つ木々

──ヒマワリの黄色

──稲穂が風に揺れる

──それから山…

自然の物と、かつて先人達が作りあげ、今に伝えられる建物

いくつも並べられた鳥居の朱の素晴らしさ


──そして海の色…



かつて見た記憶があるからこそ

美しいと感じたの。




そして生まれた意味を知った気がした。
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