妖狼と少女
それを見てクリティアは我が目を疑った。
人の子だと?何故このようなところにいる?しかもまだ赤ん坊ではないか。
己の力では生きていけないであろう赤ん坊。それをこの雨の中に捨てていくとは…。
しかしクリティアはそれを拾うことなくくるりと踵を返し森の奥へと帰っていく。
自分には関係のないことだと結論付けて。
クリティアが自分の寝床へ戻ったころ、既に辺りは真っ暗だった。
眠ろうと目を閉じくるりと丸まる。
静かなその場所には雨の音。それに混じって微かな泣き声が聞こえてくる。
人の子が例えどうなろうと自分には関係ない。そう関係なんてないのだ…
その後も止むことのない泣き声。
クリティアは閉じた目を開き、すくっと立ち上がった。そして再び土砂降りの雨の中に駆け出した。
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