妖狼と少女
再び元の場所へ戻る。そこにはやはり雨の中、己を産み落とした母の温もりを求め必死に泣き叫ぶ赤ん坊がいた。
その姿を見てクリティアは目を細め見つめる。まるで見定めるような眼差しで。
何故自分はこれが気になるのだろうか。
今まで人になど興味はなかった。寧ろ関わるつもりすらなかったはずだった。
何故か耳に残るこの泣き声。何故か脳裏に映る必死な姿。何故か興味が湧いた存在。
育ててみようか。
なにか己の世界が変わるかもしれない。
この興味の正体が分かるかもしれない。
興味が失せたら捨てればいい。そう、こいつの親のように。
そんな気まぐれな気持ちでクリティアはこの赤ん坊を拾った。
それが二人の出会いであった。
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