彼と彼女と彼女と彼と
「で、本当に欲しいものはない?」


徹平が顔を覗き込んでくる。


…恭の言葉がほしい。


なんて、言えないしな。


「ごめんね、今はないかも」


とことん嘘つきだ、私。


「そっかぁ~。残念だなぁ。ま、仕方ないよな」


「…本当…ごめんね?」


今回ばかりは申し訳ないな。


せっかくこんな私のために用意してくれようとしてたんだから。


「…ありがとね」


私がふいにそう言うと、徹平は一瞬固まった。


が、すぐに赤くなって、すごく焦りながら


「い、いや、俺は…」


だって。



< 12 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop