彼と彼女と彼女と彼と
「って、ちょっとは否定してくれてもよくね?」


「…どこを」


「…徹平くんはバカじゃないよ~。ちょっとお勉強が苦手なだけだよ~。あたしのほうがバカだよ~…みたいな」


「…あたし、正直者だからんなこと言えない」


「…ぐざっ…言葉にとげがはえてるな」


「あっはっはっは、よかったね」


「なにがよかったのか全然わかんねぇ」


「それは徹平くんがおバカだからだよ」


「…お前のがバカだし」


「徹平はバカだ」


「はってなんだ、はって」


「徹平だけがバカだ」


「お前に言われても説得力ねぇし」


「うるさいわね」


「もっとさ~郁美とかに言われたら従う気にもなるけどさ~」





「…っ…あたしは郁美にはなれないもん」


…なれないものは、なれない。


あたしは奈々だから、奈々以外にはなれないもん。




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