眠る心
先生の顔をじっと見つめて
話を真剣に聞いている柊雨。
 
「バンドとわたしに
 関係することだけが
 彼女の中で
 消えてしまっている」

「そうです、きっと
 彼女が生きて来た中で
 一番インパクトがあり 
 思い入れのあった出来事
 だけに、頭を打った衝撃で
 そこの部分だけが
 消えてしまったんでしょう」

「・・・そんな」
 
柊雨は、落胆した表情を
浮かべる。

「しかし彼女は、過去の出来事
 の話を聞いた時などに起こる
 酷い頭痛の最中、頭の中に
 情景が浮かぶそうです 
  
 そうシュウさん、あなたと
 過ごす幸せな日々を・・・
 
 あなたの方を微笑ましく
 みつめる自分の姿を・・・
 
 しかし、肝心なあなたの顔は
 見る事ができないそうです」

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