眠る心
柊雨は、苦痛の中でさえ
自分の事を思い出す事の
できない、凪子の辛さを感じ
何とも言えない思いに
胸が苦しく声も出ない。

「彼女は今、あなたを
 愛していただろう頃の自分と
 思い出せないでいる自分との
 狭間でとても苦しんでいます 
   
 その苦しみは、記憶を
 取り戻したくない方向へと
 頭が勝手に認識させてしまう
 可能性もあります 
   
 そうなると、症状を悪化
 させてしまいます 
   
 そこで、これからの治療方法
 をお知らせ致します」
 
ひと呼吸をつく紫季。

「シュウさん、あなたには
 なぎさんと距離を置いて
 頂きたいのです」

柊雨は、重い口を開く。

「先生は
 俺が彼女に
 会わない方がいいと・・・」
< 51 / 236 >

この作品をシェア

pagetop