宛て名のないX'mas
「初めて裕美ちゃん見た時から、可愛いなって思ってたんだよ。めちゃめちゃけな気だし」
「そんなこと…」
「でも亮太がいるから、つけいるスキないかなぁなんて」
「そんなっ、アイツは関係ないです!」
体を乗り出す裕美を、孝志はまた笑った。
裕美は顔を真っ赤にした。
「じゃあ、よかった」
(よかった…って!先輩、それは一体どういう意味で言ってるのでしょう?)
裕美が顔を赤くして目をぱちくりしている間に、孝志の携帯が鳴り、孝志は電話に出た。
そして「おー、今行くわー」と軽く返事をし、立ち上がった。
「じゃ、裕美ちゃん、俺行くね。あ、ていうかさ、メールちょうだい。亮太から教えてもらってんだろ?」
「は、はい。昨日は何か、緊張しちゃって…」
「そんな固くなんなくていいから。待ってる。じゃ」
さりげなく決めセリフを放って、孝志は店を出て行った。
裕美の頭の中で、孝志の言葉がエコーのように繰り返される。
『待ってる』
裕美は目をハートにさせて、天を仰いだ。
こんなに仲良く喋れるなんて、夢みたい!と信じられない気持ちだ。
「ちょっと、あたしはいつまで隠れてればいいわけ?」
うんざりそうに後ろ頭を掻きながら、里奈が席に戻ってきた。
しかし裕美は、完全に上の空。
「待ってる…だって」
「だーめだこりゃ。花が飛んでら」