宛て名のないX'mas
「亮太…なぁ」
亮太とはくされ縁。
小学校の頃から、いつも近くにいた。
ガキで、バカで孝志とは正反対。
でも、亮太と孝志を比べることはできない。
それは、絶対。
(でも、そういや初恋は亮太だったっけ)
裕美は小学校の時を思い出して、微笑ましくなった。
(雪が積もったクリスマスの日、外で雪だるま作りながら、告白したんだよなぁ)
―「リョータくん、裕美ね、リョータくんのこと好きだよ」
「できた!雪だるま、完成!次は雪合戦しようよ!」
「ちょっと、聞いてる?リョータくん。ねえ、リョータくんってば」
「あれ、裕美ちゃん、真っ赤なお鼻のトナカイさんだぁ~!あはは」―
(トナカイさんだぁートナカイさんだぁートナカイさんだぁー…だぁー…だぁー…)
「…はあ、やなこと思い出した…」
裕美は、額に手をやり、思い切りため息。
少女裕美には、寒さで赤くなった鼻を、真っ赤なお鼻のトナカイさんと言われたことが、とてもショックだったのだ。
そしてそれは今でもトラウマに…。
(今思えば、あの頃から、乙女心分かってなかったなぁ、アイツ)
その後すぐに、パンチをくらわしたことを、裕美は今でも覚えていた。
そんなことがあったから、裕美は亮太を恋愛対象にすることに抵抗があるのであった。
その時、電話が鳴った。