宛て名のないX'mas
(何今の!)

やっぱり、相手が亮太だろうと、男の子と部屋に二人っきりは照れるものだ。


(亮太は、あたしと部屋に二人っきりだろうが、別に何も思わないのかな?)


ちらっと亮太の横顔を見ると、特に何も感じていないようだ。


(普通だし…って別に何も感じてなくていいんだって!)


「えー、次の英文を日本訳しなさい。This instruction manual…」


(でも亮太、手、大きくなったな。まつげは相変わらず長いけど。
何ていうか、男っぽくなった気がする…)


「…裕美、聞いてる?」

「へ?あー、ごめん。あ、この問題だっけ?(危ない、危ない!何考えてんの、あたし)」


「そっちじゃなくて、こっち(何か、上の空だなぁ。孝志先輩と何かあったか…?)」

「あー、こっちね!(亮太、孝志先輩とちょっと仲良くなったこと、聞いたら驚くかなぁ。うふふ。孝志先輩)」


「…(うわぁ、何かニヤけてるし。マジかよ〜…って、アドレス教えたの俺じゃん!…はぁ。でも、だって、あれは孝志先輩が裕美とメールしたいって言うから…)」


「…(でも、亮太に普通に祝福されたら、何か微妙にさみしいかも…。って何か矛盾してない?あたし)」


パッ。

二人は目が合い、咳払いや、伸びをして、わざとらしく目をそらした。


「これ、終わんのかな。課題提出、明日なんだけど」

「…やるしかないでしょ!さっ集中、集中!」


恥ずかしくなって二人は、しゃきっと姿勢を正して気合を入れた。

溢れるほどの量の課題。


関係代名詞、仮定法過去、接続詞That、続いて科学、エーテル結合、ケトンの生成…へスの法則……。
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