宛て名のないX'mas
外は相変わらず寒く、容赦なく風が吹きつける。
「さび~」
「何なのよ、アンタは!」
すると亮太は裕美を振り返って、真剣な表情を見せた。
裕美は、瞬きをして黙る。
「愛の告白」
「はっ?!」
裕美は少し動揺し、顔を赤くした。すると亮太はぶふふと吹き出して笑った。
「ははっ、冗談だっつーの。本気にすんな」
「アンタ一回死んだら!」
「俺にそんな態度取っていいのかなぁ」
「は?」
顔をしかめて、再び黙る裕美。
亮太は、フフンと笑ってポケットを探り、何かを取り出した。
裕美はさっきから、主導権が亮太にあることがしゃくに障るが、おとなしくそれを待っていた。
「お前に一足早いクリスマスプレゼントをやろう!」
「は?」
「じゃん」
「何それ?」
亮太が開いて見せたのは、二つ折りにしてあった一枚の紙切れ。
何じゃこりゃ?マジマジと書いてある文字を見ると、そこにはあるメールアドレスが。
「これって…」
「孝志先輩のメアド」
「うえ?!えっ嘘!」
「おっとぉ!」
裕美がその紙をひったくろうとすると、亮太がひょいっと持ち上げそれを死守した。
「ちょっと、あたしにそれくれるんでしょ?早くちょうだいよ!」
「ああ、やる。でも、交換条件」
「何?何?」
「補習の課題手伝ってくれよ。マジでちゃんとやらねぇと、俺、試合出れないかもしれねぇんだよ。かなり危ういんだよ。」
「…分かった!分かったから、それ、ちょうだい!」