宛て名のないX'mas
「…ふう、よし」
裕美がまた座りなおし、ベッドの上で正座をし、携帯を開いた瞬間、着信音が鳴った。
♪~♯~♭
「わっ」
《着信・三田亮太》
「びっくりした。何だ、アイツか…」
裕美は脱力し、うっとうしそうに電話に出た。
「もしもし、何か用?」
『あ、裕美?なぁなぁ、♪わっすれられないの~っ歌って何てタイトルだっけ?』
「は?」
『いや、今さぁクロスワード解いてて、どうしてもここだけ分かんなくてさぁ。聴いたことはあってもタイトルまではなぁ。ちなみに六文字なんだけど?』
「アンタ、どんだけ暇人なの。ていうか、そんな暇あったら課題やんなさいよ!」
『バッカ!この懸賞で、岸本のサインボールもらえんだよ』
「知らないし。ていうか、あたし今忙しいから切るよ?」
裕美は頭を掻いて、ベッドに寝転がった。
『あ、お前さ、孝志先輩にメールした?』
「…まだ」
『やっぱな、どうせおじけついてんじゃねぇかって思ってたよ』
カチン。
裕美は向きになって言い返す。
「よけいなお世話ですー。あたしはね、絶対、孝志先輩とラブラブなクリスマス過ごすんだから、邪魔しないでよね」
『あーそうですか』
「あたしにはね、恋のサンタさんがついてるんだから!」
『はっ?』