宛て名のないX'mas

亮太は、「何言ってんの、お前」と言って笑い出した。

裕美は、「シマッター」状態だ。


「あ、あー、もう切るから!」

『頑張れよ、サンタさん』

「じゃーね!」


裕美は電話を切ると、ぽいっと携帯を放り投げた。

亮太相手に、乙女チックなことを言ってしまった自分にため息…。


そしてすぐに、コルクボードに張ってある孝志の(隠し撮り)写真に目をやった。

「サンタさん、かぁ…」


(今年こそ、ロマンチックなクリスマスを…)


―…


一方、電話を思い切り切られた亮太は、携帯をパカっと閉じたり、開けたりして、座っていた椅子でくるくる回った。


「サンタさん、ねぇ…」

亮太は、孝志先輩とラブラブなクリスマスを過ごしている裕美を想像した。

楽しそうだ。
めちゃめちゃ楽しそうだ。

裕美の周りには、花や天使が飛んでいる。しかし、あれ?


チクリ。


「んあ?」

どうした俺?!とばかりに、心臓に手をやり、部屋を歩き回る亮太。

チクリ、チクリ。痛ぇっつの!


「ぬあーっ何じゃこりゃ」


わけも分からない心の痛みに亮太は首を傾げるしかない。


そこへ、にゃ~っと、飼い猫のどら吉が亮太の足に擦り寄ってきた。

亮太は、ため息をついてしゃがみ、どら吉の頭を撫でた。


「どら、俺、変だよなぁ」


どら吉は、可愛く首をかしげ、返事をする代わりに、ぴょんっと飛び跳ねて、雑誌の解き途中のクロスワードのページをビリっと破いた。


「あ~!!」
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