宛て名のないX'mas
その頃、裕美はもう一度、携帯を手にし、メール作成画面と向き合っていた…が。
「やっぱ無理!だめだ、今日はやめよう。明日!うん、明日」
結局メールできないまま、DVDを探り出し、テレビの前にちょこんと座った。
クリスマスも、もう目前。
幸せそうなハッピーエンドドラマが世の中には沢山溢れている。
裕美は、それを一つ残らず録画していた。
テレビの前で、涙を流しながら、
「うう、泣ける。うらやましい、コイツラぁ…」
などと一人で呟いているのだった。
―…
翌朝。
♪~♯~♭
「ん~…」
裕美は携帯の着メロで目を覚ました。
ちゃっかり曲は、『マライアキャリー』のあの名曲。
昨日ドラマにどっぷりハマって、結局夜中の3時過ぎまで起きていた裕美は、目を開けるのもやっと。
うだうだしながらも、やっとのことで電話に出た。
「あい、もしもし?」
『あっ裕美?おはよ!あたし、里奈だけど』
「…何よ、朝っぱらから」
里奈の元気な声が耳に響き、裕美は少し携帯を耳から離して、目を擦りあくびをした。
『朝っぱらからって、もう十時じゃん!ねえ裕美さ、今から出てきて』
「えぇ、やだよ。めんどくさい…」
『いいから!駅前のマックね。今すぐよ!』
「えっ、ちょ…」
ツーツーツー。
「…んもう~」
裕美は一方的な電話を理不尽に思いつつ、仕方なく体を起こし、顔を洗いにいった。