宛て名のないX'mas
―…
「あ、裕美~。こっちこっち!」
マックに着くと、裕美は一階の四人席の所に里奈を見つけた。
そしてちょうどお昼時だったので、それぞれセットを頼んで席に運んだ。
「ふわぁ~眠い…。で?何の話?」
大きくあくびをしている裕美を見て、里奈が新作のハンバーガーにかじりつきながら、呆れた顔をした。
「アンタねぇ。若いんだから、もっとシャキっとしなさいよ」
「へいへい」
「まったくアンタは…。ま、いいや!でさ、これ見て見て!」
里奈は嬉しそうに鞄からある広告を取り出し、テーブルの上に置いた。
裕美は「何これ?」とその紙をまじまじと見た。
《☆クリスマス編み物体験教室☆
愛のこもった手編みのクリスマスプレゼントで、大好きな人に気持ちを伝えましょう》
「編み物教室ぅ?」
「うん!ねえ、これ一緒にやろうよ」
「やっだよ、かったるい。それにクリスマスのプレゼントに編み物なんて、ちょっと古くないすか?」
裕美が苦笑して後ろにのけぞると、里奈は逆に前に乗り出した。
「そんなことないって!目新しい物で溢れかえっている現代だからこそいいのよ。手編みのマフラーなんてあげてみなさい?もう武田くん、感動してあたしにベタ惚れ!あ、こりゃ泣くな。うん」
はて。
武田くんって誰だ?
なんて聞くまでもなく、昨日の今日でもう里奈には彼氏候補がいるご様子。
「あたしは、別にあげる人いないし」
「何で?孝志先輩は?」
「無理!!どん引きだって!ただでさえ、メールもできずにいるっていうのに…」
裕美は机にうつぶせ、里奈はえっと話に食いついた。