キス魔なアイツ
パニック気味な頭で考えるが訳が分からない。
谷川くんのキス魔スイッチが入っちゃったの?
もう少しで唇が触れちゃう…と思った…、
次の瞬間、素早く腰に回された第三者の手によって、私の体は後ろに引っ張られた。
誰…?
「タマに触るな」
頭の上から、体に低音が響いた。
掴まれた腰、背中に当たるのは、先輩の体の感触…
「銀先輩…?」
ドキドキ、ドキドキ…
周りを見ると、他の先輩方はキョトンとしていて、誰も声を出さない。
両隣の谷川くんとなっちゃんは大声で叫んだ。
「「ホイホイ完了!!」」
「チッ」
後ろから銀先輩の舌打ちが聞こえた。
「行くぞ」
「え…?」
私はそのまま右手首を捕まれ、木々が立ち並ぶ森の方へ連行された。
「銀先輩?」
「ムカつく!!」
私はまた先輩を怒らせちゃったの?
もうよく分からないや。胸が痛い、痛いよ。
「ムカつく! ムカつく!!」
先輩は人気の無い方へ向かいながらも、イライラした口調で"ムカつく"を繰り返してる。
もうみんなから見えないくらいの所まで来た。
クルッと振り替えた先輩は、怒ってると言うよりは切なそうな苦味のある顔をしていた。
「…先輩?」
次の瞬間、私の体は近くの木に強く体を押し付けられた。