キス魔なアイツ
*始まり
それの始まりは、オレの暴走からだった。
飲み会の席では環をいつも隣に置いて、自分のモノだと自然にアピールして来た。
それは環が彼氏と別れても変わらなかった。
その日の環は結構飲んでいた。
赤い顔をしたまま廊下に出ようとしている。
後ろから見てても危なっかしいので、すぐオレも席を立って追いかけた。
飲み屋の廊下をフラフラ歩く環、転びそうになってとっさに後ろから体を支えた。
さらりと揺れる髪、アルコールが混じった甘い匂い、そして右腕に当たる胸の感触。
オレの体は中心からビリビリと痺れた。
もう止まらない。
オレはお前を抱きしめたまま、近くの個室に連れ込んで思いっ切り唇にかぶりついた。
これが環の感触。
貪る度に聞こえる甘い声。
ヤバい。ヤバい。
何度も何度も口付けた。
「先…輩…?」
環の小さな声で我に帰った。
ヤバい。あのままだったらマジ止まらなかった。
「ごめん…オレ」
環は、キスの後の色気のある顔でニッコリ笑ってくれた。
でも。もうこれで嫌われたと思ったのに、何故か?環の記憶には残らなかったんだ。
味をしめたオレは、その日から環に強いカクテル勧めるようになった。
早く酔えよ。
オレの醜い欲望の為に。