キス魔なアイツ
タマは犬
「おい、タマ。ジュース10本」
ポイッと投げられたエコバッグに、短い単語を並べただけの命令文。
「「また環チャンに頼んじゃっていいのぉ~?」」
「いいんだよ」
「「重いよ。かっわいそぉ~」」
本気で可哀想なんて思ってない、猫なで声を出すお姉さま達に囲まれて、笑顔を振りまいている銀先輩。
命令した張本人は、もう私の方なんか見てもいなくて。
悔しくて無意識に唇を噛み締めた。
「行ってぇ…きまぁ…す…」
やる気のない声と共に、持つだけて恥ずかしい、犬の絵と"タマ"と書かれた、この銀先輩特製エコバッグを手に取り部屋を後にした。