クロス
永池雄介 18歳 春
 俺は今、大学の講義を受けながら、これからの人生どうするべきかを真剣に考えている。マルクスとかアダムスミスが何をしたかということよりも、これから自分が何をしたいかということの方が、俺にとっては重要であり、真っ先に把握しておきたいことでもある。
 
 果たしてこの大学というものに、意義はあるのだろうか。入学してしまった自分が言うのは何だが、これからはネットでも何でも学ぶ気さえあれば何だって学べる時代になる。金銭を負担しなければならない授業というものが、どこまでこの国の形として存在し続けていられるかどうかは、はっきりいって疑問である。
 
 こんなふうに迷い悩みながら大人になっていくことに意味があるとよく言うが、本当にそうだろうか。その迷い悩んでいる間に、何か自分の将来へと結びつく具体的な行動を引き起こし、早々に学んでいくことができれば、その方がより自分にとって有意義な行いであったと定義できるのではないだろうか。
 
 できれば3日以上、考え事をしていたくはない。大学に入学してちょうど3日が過ぎた。このままの状態で講義を受け続けている自分を肯定することは、俺にはできないし、他人に肯定してもらったところで、何の解決にもならない。突発的な行動であるのは自負しているし、何も考えず進学という道を選択した自分に対する疑念も尽きないが、俺には俺なりの決意があり、それが今まさに固まりつつあるという確信がある。
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