クロス
 だから俺は、自信をもって田舎で暮らす母へと告げた。「大学を辞める」おそらく、母が次の一言を口にするまでに、1秒単位の間隔もなかった。「考え直しなさい。」たったひとこと、理由を説明する前に即答され、電話を切られた。俺は、どうやら母親似のようだ。

 またいちから考え直すとしたら、さらに3日は時間がかかる。考え直して同じ結論がでてしまった場合、その3日間は明らかな時間の浪費になる。俺は何かに強引に引っ張られるかのような焦燥感に襲われつつも、遅れて自分の熱意や願望が追走してきていることに気がついた。

 その後さらに10秒程考え、母のことはとりあえず無視しようと決めた。先日父を亡くした俺には、これから先家族と自分を支えていく義務がある。大学で一生懸命勉強し、一流企業に就職し、昇進していくために日々精進する、そんな長期戦略は、今の俺には必要ない。明日にでもまとまった金を手にし、家族と俺自身の精神的、肉体的負担を減らしていかなければならない。

 守りに入っている暇はない。とにかく、諸々の成功に向かって攻め続けていかなければならない。高ぶり続ける感情を引き連れて、俺の人生は加速を始めている。
これからの人生どうするべきかを真剣に考え、俺は大学でたった3日間不貞腐れつつも学んだ経済学を礎に、起業をしてみることにした。
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