ビル群に咲く
 テレビをつけると、1時間ほど前に私が破壊した数多くのビルが映っていた。
 本当に壊してしまったのだ。
 ああ愉快だ! 最高だ! こんなに可笑しい事はここ数年来の出来事だ! 快挙だ!
 私は笑った。あはははは。爆笑した。あはははは。ひひひひひ! 面白い面白い面白い。腹がよじれ、呼吸困難に陥った。
 苦しいほど笑ったのは久々だ。心から大爆笑した。
 後悔の念は、不思議にもまるで沸いてこなかった。むしろ空可笑しくもあった。
 「無差別テロか」「過激派による犯行?」「国家的な犯罪」なるさまざまなテロップが画面を彩っていたが、その一つ一つが違うの。それ全部やったの私! フセインで! あ、このフセインはソフトの方。やわらかい方。
 この事を誰かに伝えようかと思ったが、よした方がいいだろう。気が変な方向性に進んでしまった人と思われるのはごめんだし、信じられたら信じられたで気が変な方向性に進んでしまった人が一人増えるだけである。
 逮捕とかされるのかな、なんて2秒くらい考えたが、そもそもこんなソフト自体存在する事は誰も予想だにし得ないであろう事を思い出して私は笑った。あはははは。
 笑いが、止まらない。空しい笑いが。
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