ビル群に咲く
退廃的アイロニー
部屋の隅に置かれているノートパソコンは、もう1ヶ月ほど起動されていなかった。
あの日以来、テレビもつけていないしラジオも聞いていない。とにかく、自分の、気まぐれに因る破壊行動についての情報を耳に入れたくはなかった。
その訳は、最初で最後に起動したあの日以来今日まで見続けている、夢である。
私のぶち壊したビルの中にいた人たちが、私を呼ぶ。真っ暗な、だだっ広い空間の中で、動けない私を。目を瞑ることも、声を出すこともできない私を。
声はやがて、背の高い草の生い茂った林を分け入るように遅々と、だがしかし確実な速度で私に近づいてくる。
後ろから、前から、上から、下から、右から、左から、私の中から。
「呼ばないで」
声は出ない。
「お願い、私の名前を呼ばないで」
声は出ない。
「これ以上呼ばないで」
声は出ない。
これ以上呼ばれると私は。
私は目を覚ました。泣いていた。後悔、悲哀、懺悔、寂寥。
あの日以来、テレビもつけていないしラジオも聞いていない。とにかく、自分の、気まぐれに因る破壊行動についての情報を耳に入れたくはなかった。
その訳は、最初で最後に起動したあの日以来今日まで見続けている、夢である。
私のぶち壊したビルの中にいた人たちが、私を呼ぶ。真っ暗な、だだっ広い空間の中で、動けない私を。目を瞑ることも、声を出すこともできない私を。
声はやがて、背の高い草の生い茂った林を分け入るように遅々と、だがしかし確実な速度で私に近づいてくる。
後ろから、前から、上から、下から、右から、左から、私の中から。
「呼ばないで」
声は出ない。
「お願い、私の名前を呼ばないで」
声は出ない。
「これ以上呼ばないで」
声は出ない。
これ以上呼ばれると私は。
私は目を覚ました。泣いていた。後悔、悲哀、懺悔、寂寥。