現代版 光源氏物語!
「いえ、今からスーツをお持ちしますので」

そう言って笑顔で店員は姿を消す。

あっ、10着のヤツか。10着かぁ、秘書になるならやっぱりそれくらいは必要かな。

ここのブランドのスーツは1着で、わたしのお給料1ヶ月分にもなる。

それが10ともなれば…いや、考えるのはよそう。

しばらくして、店員が帰って来た。

「お待たせしました。ではこちらに」

店員が持ってきたのは、桜色のスーツだった。

手伝ってもらいながら着て見ると、意外と悪くない。

「外で源氏さまがお待ちですよ」

「あっ、はい」

おずおずと試着室から出ると、社長はレジで男性店員と談笑していた。

「あの、社長。着替えました」

「ああ」

振り向いた社長は、わたしの姿を見て少し固まった。

「えっと、どこかおかしいですか?」

靴も用意されていた物に履き替えた。

すると驚くことに、形だけは秘書課っぽくなるのだから不思議だ。

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