現代版 光源氏物語!
わたしの閉じた瞼の裏に、さっきの光景が浮かび上がる。

イスに座っていたのは我が社の社長。

まだ38歳という若さで、一代でこの会社をここまで成長させたスゴイ人。

…の膝の上に、一度は見かけたことのある秘書課の課長が乗っていた。

……見てはならぬ現場だったのだろうか?

いや、でも社長は返事をした。だから入った。

入るのが…早かっただろうか?

「おい、何をしている?」

「はっはいっ!」

再び社長室の扉を開けてしまう、わたし。

…悲しい平社員のサガだ。上の権力には逆らえない。

しかし再び扉を開けた先には、さっきと全く変わらぬ光景があった。

もう…いいや。深く考えるのはよそう。

「失礼します。あの、今朝人事異動のことを知りまして、お話しに来ました。わたし、何か事務で失態をしましたか?」

「いや、お前は非常に優秀だ。通常、8時間する仕事を3時間で片付けるんだからな」

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