花歌―ハナウタ
真由美が、龍司くんがどうとか言ってたけど、まるで耳に入っていなかった。



ヤナ奴というイメージだけ。



大体顔もはっきり覚えてない。



もう頭の中は、これから始まる生活へのウキウキでいっぱいだった。



まずあたしたちは、お金をどうするか、話し合った。


真由美も、昨日カラオケで使って残り少ない。



明日の生活どうこうより、
洋服やバッグが欲しかったり、
美容室に行きたかったり、
おいしいものが食べたかったり、


目の前の欲で頭がいっぱいなあたしたち。




家にあった求人誌を手にとる。



今まで気にも留めなかったナイトタウンの求人情報が目についた。



《日給一万3千円、日払い可、未経験者大歓迎!》



真由美と顔を見合わせる。


『17ってばれないかなぁ?』



『とりあえず18ってことにして、行くだけ行ってみようょ。』



〔お気軽にお電話ください。〕


と書いてある。



真由美と一緒なら大丈夫な気がした。



むしろ、未知なる世界への好奇心でいっぱいだった。


早速電話をかける。



電話に出たのは感じのいい男で、18ということと、この仕事が初めてと伝えると

『全然ダイジョウブですょ〜♪』


と、軽いノリで言った。



場所がわからないというと

わかるとこまで来てもらえたら、迎えにいきます。

と言う。



まだまだ世間知らずな17歳のあたしたちはそんなことくらいで、親切だねなんて思った。




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