花歌―ハナウタ
マンションには、帰らない日も増えていった。



二人で駅のホームなんかにしゃがんでいると、

『二人で6万でどう?』

なんて、声をかけてくるオヤジなんかがいっぱいいた。



こんな奴らを、心から軽蔑していた。



左の薬指に結婚指輪をしてるのなんかを見ると、 

こいつも家では、いいマイホームパパなんかしちゃってんのかなと思い、吐き気がした。



こんな汚い大人たちから、偉そうに説教なんてされたくない。



大人ってなに?



大人は汚い。



こいつらみたいにはなりたくない。



『キモイんだよ!』



『あっちいけよオヤジ!』


罵声をあびせられたオヤジはバツが悪そうに、そそくさと逃げていく。



自分が人に言えないようなことしてるから、なんにも言い返せないんでしょ?

ちょっとは、反省しろよ!


悪者を退治したかのような気分になっている。



【身体だけは売っちゃダメ!】



あたしと真由美の固い約束だった。



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