花歌―ハナウタ
具合が悪いときって、どうして、こんなに心細くなるんだろう。



真由美は帰ってくるのに。


一人じゃないはずなのに、


この世でたったひとりぼっちのような気がしてしまう。



寝転んだまま、あたしは電気もつけず、天井を見上げていた。



真由美と雑貨屋さんで買ってきて一緒に貼った暗やみで光る星型のシールが、ぼんやり光っていた。



ここ最近、部屋でゆっくりしたことなんかなかった気がする。



あたしはいつしか眠りに落ちていた。





―――大きなチューリップの花束をかかえて、あたしは楽しそうに歌ってる。




何歳くらいだろう。



小学校一年生くらい?



両親も笑顔で笑ってる。



ほのぼのした光景。



あたしは自分の涙で目が覚めた。



夢を見たのなんか、久しぶりだった。



思い出していた。



あたしは、小さいころから歌を歌うのが大好きだったんだ。



両親もあたしが歌うと、

『結城は歌手になれるかもね』なんて笑ってたっけ。



―――結城ちゃんは大きくなったら何になりたいの?


―――歌手になりたい!



あたしが歌を歌うと大好きな花をいっぱいもらった。


遠い記憶。



いつしか家族から、笑顔は消え、

あたしが歌をうたうと、

『静かにしなさい!』と怒鳴られるようになった。



それでもあたしは歌を歌う。



大好きな歌を歌うと気持ちが晴れるから。



あたしなりの自分の励まし方。



悲しいときや、苦しいとき、ツライいときこそ。



歌うことは、あたしの心の叫びだった。



―――こんなときに、歌うな!



どうして怒るの?



あたしは前みたいにみんなで笑いたい、楽しくしたいだけ。



前みたいに笑ってよ。



さみしいょ。。





―――あたしは弱虫だ…。




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