花歌―ハナウタ
あたしは龍司の部屋に戻り、
龍司の寝顔を今までとは明らかに違う気持ちで見つめていた。



寂しかったんだよね…?



形は違うかも知れない。



でもあたしもそうだよ。。


視線に気付いてか、龍司がぼんやりと目を開けた。



あたしの手をぎゅっと握ると、

『どこにも行くなよ…』

つぶやくようにそう言った。



まさか愛じゃないと思う。


同情?



あんな始まりなのに。



でもそのとき、あたしはいつも強気な龍司の弱さを見た気がした。



そして、確かに、そのときの龍司を愛おしく思ったんだ…





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