花歌―ハナウタ
その日、
店に出勤すると
あたしの顔を見るなり、
なんだかみんなの様子があきらかにおかしかった。
??なんだ?
なにかあった?
声をかけようとすると
『水谷。ちょっといいか…?』
店長に呼び出された。
明らかにいい話ではない。
店長の顔で察知した。
『……水谷、お前、
変な男と関わってないか…』
店長の第一声はそれだった。
『?』
一瞬、意味がわからなかったがすぐに嫌な予感がした。
『昨日、お前を出せと柄の悪い男が店にきてな…
対応した林田が
暴行を受けた。心当たりはあるか?』
……龍司だ。
そう直感した。
『……すみません。
多分、あたしが前付き合っていた人です。』
クビだろうか。
『迷惑かけて、すみません。林田さんは大丈夫ですか』
『林田はたいしたことない。
ああ見えて強いからな
それより心配なのは水谷だよ、大丈夫なのか?』
『…あたしは大丈夫です。』
そう答えるのが精一杯で
あたしはそれ以上、
店長の顔が見れなかった。
…クビだ……きっとクビ……
手に入れた平穏な日常が
ガラガラと音をたてて
崩れていく…