花歌―ハナウタ
めちゃくちゃ
その日は仕事どころじゃなかった。
お客さんの出入口がつねに気にかかる。
仕事に集中できない。
そんなあたしの心配をよそに、
何事もないまま、
仕事の時間は終わりに近づいていた。
早く、終わって…
時間が長い。
『今日は儲かった!!(笑)』
勝った常連のお客さんが、
満面の笑みで話かけてきた。
その声で
ハッと我に返る。
いつものようにたわいもない会話を交わしていると
『おい……』
低い、聞き覚えのある声がした。
振り返った先には…
龍司の姿があった。
サングラス越しに
鋭い目が見えた。
あたしが一度は
好きになった目。
今は怖い。
怖かった。