ことば
その瞬間目を疑った。
食堂横の庭が見えるその窓の遠くの方に、この雨の中傘もささずに立つ男の姿があったのだ。
(何やってんのあの人…。)
大学の中でわざわざ雨に濡れる場所にただ立ち尽くしているその姿は、あまりにも異様で滑稽だった。
その不思議な光景から目が離せずにいたその時、男が突然空を仰ぎ何か黒いものを空に向けた。
-カメラだ-
それがすぐにカメラだとわかったのは、今私の鞄の中に入っているものと全く同じ姿形をしていたからだ。
そして男は雨が降りしきる空に向かってひたすらにシャッターを押し続けた。
まるで雨なんて降っていないかの様に。
まるでこの世界には自分と空しか存在しないとでも言うかの様に-
「自由人…」
「え??」
どうやら気付かずに声に出してしまっていたらしい。
旅行の計画を夢中に手帳に書き込む手を止めて、唯がこちらを見上げた。
「自由人…ってあたしの事??」
不安そうな顔をして唯が私の目を覗き込む。
強引に旅行を決めた自分の事を責められているのかと思ったみたいだった。
「ちゃうちゃう!自由がいいなーって言っただけ!ホラうちの家厳しいから!」
唯はホッと肩を撫で下ろし、微笑みを浮かべた後再び手帳に視線を落とした。
もう一度窓の外を見てみた。
が、もうそこにはあの男の姿はなかった。
間違いないと思った。
“亀”の部室の壁一面を埋め尽くす美しい写真を撮ったのは、大学にいたかと思えば次の日にはインドにいる自由人は、あの男に違いない。
食堂横の庭が見えるその窓の遠くの方に、この雨の中傘もささずに立つ男の姿があったのだ。
(何やってんのあの人…。)
大学の中でわざわざ雨に濡れる場所にただ立ち尽くしているその姿は、あまりにも異様で滑稽だった。
その不思議な光景から目が離せずにいたその時、男が突然空を仰ぎ何か黒いものを空に向けた。
-カメラだ-
それがすぐにカメラだとわかったのは、今私の鞄の中に入っているものと全く同じ姿形をしていたからだ。
そして男は雨が降りしきる空に向かってひたすらにシャッターを押し続けた。
まるで雨なんて降っていないかの様に。
まるでこの世界には自分と空しか存在しないとでも言うかの様に-
「自由人…」
「え??」
どうやら気付かずに声に出してしまっていたらしい。
旅行の計画を夢中に手帳に書き込む手を止めて、唯がこちらを見上げた。
「自由人…ってあたしの事??」
不安そうな顔をして唯が私の目を覗き込む。
強引に旅行を決めた自分の事を責められているのかと思ったみたいだった。
「ちゃうちゃう!自由がいいなーって言っただけ!ホラうちの家厳しいから!」
唯はホッと肩を撫で下ろし、微笑みを浮かべた後再び手帳に視線を落とした。
もう一度窓の外を見てみた。
が、もうそこにはあの男の姿はなかった。
間違いないと思った。
“亀”の部室の壁一面を埋め尽くす美しい写真を撮ったのは、大学にいたかと思えば次の日にはインドにいる自由人は、あの男に違いない。