ことば
始まり
①
2002年4月1日。
私は第一志望だった大学の入学式に向かい、長くゆるやかな坂道をのぼっていた。
京都の山奥にあるキャンパスは最寄り駅から歩いて15分。
大阪にある実家から電車を乗り継いでおよそ2時間。
通学時間だけで映画1本見れてしまうのかと思うと自然と気持ちが萎えてしまう。
「あんたほんまにこんな所4年間も通えんの?」
隣で息を切らしながら歩く母が苦しそうに言った。
「だから下宿させてって言ってるんやん。」
それは合格通知を手にした時から何度か両親に掛け合っていた事だった。
「アホ。だからそんな余裕どこにあんの。」
確かにその通りだった。
兄と2人して私立大学に通わせるだけでも大変であろう事はうちの経済状態を見ていれば一目瞭然だ。
それでも大学に行きたいという子供達の願いを叶える為に汗水垂らして働いている両親にあまりワガママは言えない。
正門に辿り着く頃には親娘揃って息切れしていた。
息を整えながらゆっくり講堂に向かう。
山奥にあるだけあって敷地はだだっ広く、至る所に芝生が敷き詰められていて、学生達がその上で寝転んでみたり、本を読んでみたり、おしゃべりしていたりとそれぞれの時間を過ごしている姿がいかにも大学生っぽくて少し笑えた。
いかにも歴史ある建物といった感じの講堂の前には、着慣れないスーツを身にまとった新入生達が群がっていて、列が講堂の中に続いていた。
その人の多さにげんなりしつつも、スーツの列の最後尾に並び空いている席を探す。
すでに席をゲットしている新入生達は、分厚い講義概要の本を開いてみたり、早速友人作りに励んだりしている。
人見知りの激しい私にとって入学式という行事は、昔から苦痛以外の何物でもない。
新しい環境の中で、自分の居場所がないという事はこんなにも心許なくて、不安で、居心地の悪いものだったんだなと改めて実感しつつ、それでも何とか座席を確保しようと必死に辺りを見渡してみた。
私は第一志望だった大学の入学式に向かい、長くゆるやかな坂道をのぼっていた。
京都の山奥にあるキャンパスは最寄り駅から歩いて15分。
大阪にある実家から電車を乗り継いでおよそ2時間。
通学時間だけで映画1本見れてしまうのかと思うと自然と気持ちが萎えてしまう。
「あんたほんまにこんな所4年間も通えんの?」
隣で息を切らしながら歩く母が苦しそうに言った。
「だから下宿させてって言ってるんやん。」
それは合格通知を手にした時から何度か両親に掛け合っていた事だった。
「アホ。だからそんな余裕どこにあんの。」
確かにその通りだった。
兄と2人して私立大学に通わせるだけでも大変であろう事はうちの経済状態を見ていれば一目瞭然だ。
それでも大学に行きたいという子供達の願いを叶える為に汗水垂らして働いている両親にあまりワガママは言えない。
正門に辿り着く頃には親娘揃って息切れしていた。
息を整えながらゆっくり講堂に向かう。
山奥にあるだけあって敷地はだだっ広く、至る所に芝生が敷き詰められていて、学生達がその上で寝転んでみたり、本を読んでみたり、おしゃべりしていたりとそれぞれの時間を過ごしている姿がいかにも大学生っぽくて少し笑えた。
いかにも歴史ある建物といった感じの講堂の前には、着慣れないスーツを身にまとった新入生達が群がっていて、列が講堂の中に続いていた。
その人の多さにげんなりしつつも、スーツの列の最後尾に並び空いている席を探す。
すでに席をゲットしている新入生達は、分厚い講義概要の本を開いてみたり、早速友人作りに励んだりしている。
人見知りの激しい私にとって入学式という行事は、昔から苦痛以外の何物でもない。
新しい環境の中で、自分の居場所がないという事はこんなにも心許なくて、不安で、居心地の悪いものだったんだなと改めて実感しつつ、それでも何とか座席を確保しようと必死に辺りを見渡してみた。