ことば
ジリリリリ…

午後の講義の始まりを告げるチャイムの音に驚き、目を開けた。

どうやらあまりの天気の良さにうたた寝してしまっていたらしい。
大きな伸びをひとつしながら辺りを見渡すと、さっきまでいたはずの学生達の姿がひとつも見当たらない。

ふと左腕の時計に目をやる。

「!!!やっば!!次の講義取ってたんやった!!」

慌てて飛び起き、教室へと走った。

幸い、大教室での講義だったので一人ぐらい遅れて入っても教壇に立つ先生にバレる事はない。

ただ、人気のある講義だったせいかもう席が全く空いておらず、一番後ろで壁にもたれて地べた座りしている生徒が何人もいるぐらいだった。

こんな時、知り合いがいれば席を取っててもらえたり半分譲ってもらえたりするものだ。
自分の性格を一瞬憎く思った。

その時、最後尾の席に座っている後姿が視界に入った。

-彼女だ-

そう、目の前の席に座っているのは紛れもなく、入学式の日にあっこと2人で“亀”の部室の場所を尋ねたあのキレイな子だった。

振り向かなくてもわかる。

彼女しか持たないオーラが全身から溢れ出ている。
座っていてもまっすぐに伸びた背筋は、あの日の後姿と全く同じだった。

(先輩じゃなかったんや…。)

大人びた顔立ちと落ち着いた雰囲気からして絶対に先輩だと思い込んでいた。

その時ふと彼女がこちらを振り向いた。
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