甘い声で囁いて
「え?」
驚いて顔を上げると、
加宮さんはすたすたと前を歩いた。
それにあたしも続く。
「秀介の気持ち、俺には分かるっつーか、こういうのって男にしか分かんねぇと思う」
「男の人にしか分からない...」
「そんで美弥の気持ちもな。一度好きになったヤツを簡単に忘れられるわけ
ねーだろ」
「そういう、もんでしょうか?」
「そういうもん、だよ。お前だって、きっと好きなヤツが出来れば分かる」
「好きな人、ですか」
「だからお前がガキとか、そういう事じゃねーんだよ」
気にすんな
そう言うとやっと追い付いたあたしの頭をぽんぽんっと優しく叩いた。
つい質問しそうになった。
“加宮さんにはそういう人いるんですか?”
だけど何故か聞けなくて
聞いたらいけない気がして。
それ以上口にする事無く駅まで何も喋らず歩き続けた。