甘い声で囁いて
「みゅう」
「だったら離さないであげてよ。あたしにはよく分からないけど。でも・・」
そこまで言うとお兄ちゃんがぽんっと軽くジャンプして降りた。
「昔はブランコからジャンプして降りるなんて怖くて出来なかったけど。こんなに簡単に出来るもんなんだな」
「お兄ちゃん?」
「大人になってもちっとも勇気とか度胸とかないんだよな。逃げてばっかりで前に進むのが怖い」
「お兄ちゃん」
知らなかった。
いつでも完璧だと想っていたお兄ちゃんも・・
「普通の人、だったんだ」
「当たり前だろ?」
くすっと笑うとあたしの方に向き直った。