甘い声で囁いて


言われて思い出してみる。



目を閉じるとあの日がいつでもよみがえる。



あの日は


大雨が降っていた。



傘も差さずにあたしは泣きながら家に帰ったんだ。




すごく辛くて


悲しくて。


この世の終わりっていうくらいどん底にいて。



でもその理由が分からない。


どうしてあんなに泣いていたのか



それが思い出せない。


悲しい事は覚えてるのに。


何かぼんやりとしたものがあるのは分かるのに。


それはそのまま歪んでいて


はっきりと形を表さない。
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