エングラム
「オウ兄がチカラ持ってたって…」
え、じゃあ何。オウ兄は。
頭の中の疑問符は、自分でも整理がつかない。
駅の改札口をぬけて話を続ける。
シイが軽く手を振って私の言葉を制す。
「店にきたオウガさん…ってオレ実は、オウって呼んでたんだけど」
そんなふうに、親しかったんだシイとオウ兄。
「初めてオウがきた日、オレはチカラで彼も超能力者だと知った」
それで話し掛けて、まぁ話すようになったな。
そうシイは続けた。
「オウのチカラは、どんなものか分かるか?」
首を横に振る。シイは頷く。
「人を操るチカラだ」
言葉を返せない私に、シイが説明を続ける。
「あいつは人の考えを自分が思ったとおりにいじることが出来るんだ。──いや、違うな」
駅を出た。外に出る。
「あいつはそのチカラを上手くコントロールできなかったんだ」
つまり、それは。
「無意識に、あいつが望まないうちに。すべてはあいつの思った通りになっていたんだ」