エングラム
口調は柔らかい。
責めるような言葉でもないが──一瞬私は肩をビクリと震わせた。
「わ、私のせいでごめんなさい…」
すぐ謝ってしまう自分が嫌だ。
「謝らないでよう。だっておかげでこうしてみんなで音楽する時間増えたんだからっ!」
キラキラの天使の笑顔。
ケイは慌てることも何もなく、綺麗な笑顔で言った。
「けどみんなでいる時間が増えるって一人の時間が──」
削れていませんか。
そう言おうとした私の頭がくしゃくしゃっ、と撫でられた。
「確かに一人でいることも大事だけど、な、良いじゃん」
悪戯っけな笑みじゃなくて、子っぽいシイの笑顔が降った。
「──ありがとうの方が嬉しいものですよ」
ユウがギターをケースにしまいながら言った。
「…………」
抱いたままのベースに、力をこめる。
「…ありがとうございます」
それを言うことはおこがましくて、私にはごめんなさいが似合うと思っていたけれど。
シイが私の頭を再び撫でた。
それが彼からの返事だった。