エングラム



その曲のタイトルは花だとケイが言った。

「ネーミングセンスないとか言ったらドラムスのシイが泣いちゃいますよー」

その言葉に聴衆がどっと沸いた。

普段だったら言い返すだろうシイも、わざとらしくがっくり肩を落としただけだったので笑えた。

ユウも肩を震わせて笑っていた。


「夏休みもライブするから聴きにきてねぇー」

夏の太陽にケイの亜麻色の髪が透ける。

夏休み──もうすぐ、だったなぁ。

彼らと知り合ってからは一日が早い気がした。
子どもの一日の長さなんて計り知れないのに。

「んでは、次──」

ケイが二人に目配せをした。

そしてスティックが打ち鳴らされる。



< 149 / 363 >

この作品をシェア

pagetop