エングラム
亜麻色の髪、ケイが
「シラン?知らん?」
語尾の上げ下げを変えて首を傾げた。
「シラン、名前」
これが私の本名だ。
「珍しい名前ですね」
ユウが言った。
「ん、よく言われます」
「花の名前だろ?」
シイが私を見た。
それが、わかるなんて。
こくん、と私は一度頷く。
今まで一度も、誰も。
花の名前だなんて気づかなかった。
初対面で、まさか。
「良い名前だな」
シイが私に笑いかけた。
黒縁の眼鏡の奥で、目が優しく細められた。
その笑顔に、つい照れ臭くなった。
名前は馬鹿にされたことこそあったが、こんな真っ直ぐに名を褒められたことはない。
「よく分かりましたねシイ」
ユウが言った。
シイがこくんと頷く。
「花言葉が、確か──…」