エングラム



亜麻色の髪、ケイが

「シラン?知らん?」

語尾の上げ下げを変えて首を傾げた。

「シラン、名前」

これが私の本名だ。

「珍しい名前ですね」

ユウが言った。

「ん、よく言われます」

「花の名前だろ?」

シイが私を見た。

それが、わかるなんて。

こくん、と私は一度頷く。

今まで一度も、誰も。
花の名前だなんて気づかなかった。
初対面で、まさか。

「良い名前だな」

シイが私に笑いかけた。

黒縁の眼鏡の奥で、目が優しく細められた。

その笑顔に、つい照れ臭くなった。

名前は馬鹿にされたことこそあったが、こんな真っ直ぐに名を褒められたことはない。

「よく分かりましたねシイ」

ユウが言った。
シイがこくんと頷く。

「花言葉が、確か──…」



< 15 / 363 >

この作品をシェア

pagetop